3、モルモットはひきこもる

ぶいーん、ぶいーんてな。

ばっかみたい。

 

部屋の電球がチタチカゆたゆらしている。

(・・・きもちわるい)

やめろよ、そういうささやかな嫌がらせ。ほんとやめろよ。

「・・・吐く・・・」

「ここで吐かれたらかなり困るんすけど」

周りにはいっぱい色んなコードやらなんやら。なんつーか、精密機械のたまりばみたいな。

「やだ吐く」

「はいはいエチケット袋」

「うげぇ」

「・・・本当に吐くんすね」

「吐くって言ったじゃん」

すっぱい、きらい、この味。胃液っぽいの。

なんてうそ。案外この味が好きだったりする。

(・・・なんて異常?)

しーらね。

「そういえば今日のお昼おいしかった。また食べたい」

「んー、何作ったっけ」

「ばか、老化、すきやきだよ」

「えー、食べたいなら良いけど。俺牛肉より鶏肉派なんすよねー。鶏鍋で良い?」

「すきやきつってんだろうが。牛が良い」

「わがままなモルモットだなぁ・・・」

うるせーな、大体鶏ばっか食ってるからんなガリガリなんだろ。

「このガリ」

「いきなり暴言はやめてくださいー」

 

かたかた

キーボードを鬱、あ、間違えた、打つ音だけが響く。

「・・・パソコン楽しい?」

「ん」

はじめてさわるパソコン。結構楽しい。

「タイピング練習してるだけなのに?・・・ってタイピングはやっ」

かたかたかたかた

「はじめてでこれとか面白いっすねー、君」

「へいへい」

かたかた

「・・・何打ってんの?タイピング練習用にあげたゲームじゃないっすよね?」

かたかた

「うん」

かたかた

「聞けよ」

「日記」

「変な子」

「なんで?」

「日記なんて楽しいっすかぁ?気持ちわりぃじゃんか。過去の自分なんて」

「楽しくはないけど。今日食べた献立とか書いてるとリクエストしやすいし、色んな食べ物思い出せるから美味しい」

「リクエストのためかい。しかも、美味しいってなぁ・・・。ってうわ、本当に献立しか書いてないよ。よくこんなに細かく覚えてんすねー」

「食べ物を忘れるなんて恋人の名前忘れるよりも罪重いよ」

「俺、恋人いたことないからわかんないっす」

「私もないけど。ニュアンス?」

「・・・はは、そーゆーとこ、好き」

「わけわかんないよ」

「日記じゃなくて献立書いてるとことか好き」

「変な奴。・・・あ、でも、私もおまえの作る料理好き。料理上手」

「料理料理って。・・・本当に君がモルモットで良かった」

なんかもう、めんどくせーおとこ。

『モルモットって何すんの?』

『そのままっすよ。俺の作ってる薬品の実験台』

『違法行為じゃん、人体実験』

『現代に法なんてあってないものだろ。何、断わる?三食つき、しかも実験の時以外は好きに遊んで良いよ』

『断るわけないし』

『そっか』

またそう言って楽しそうに笑ってた。

 

 

 

ワタクシ現在、へんな男と、ひきこもり中でございます。

(・・・なんか、ねむいな・・・)

おやすみなさいませませ。

 

 

 

 

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