61%の年明け

「年明けたっすね」

「あー、うん。で?」

「や、別に」

 

何でこいつ年が明けたなんてどうでも良い情報言ってくるんだろう。

そもそも、私もお前もほとんど外出ないだろっていう。

 

「あ」

「うわ、いきなり声出すのやめてくださいよ。ビビる」

「このビビり」

「えー・・・新年早々理不尽っすねぇ・・・」

あー、えっと。違う。別にこいつを罵りたいわけじゃなくて。

「憧れが、あるんだけど」

「は?なに?」

憧れとか口にしたら心底気持ち悪そうな目で見られた。

そんなに私が”憧れ”だとかキラキラしい言葉を使っているのが気持ち悪いか、この野郎。

・・・違う。また思考が脱線した。

「お年玉」

「・・・はぁ?」

「お年玉、頂戴」

「・・・え、何で。別に欲しいもんは買ってあげるし、そもそも君お金使わないじゃんか」

「や、なんか。お年玉って響き、憧れない?」

「・・・全然わからん。つか、君、人にお年玉ねだるのに随分横柄な態度っすねぇ」

と、文句を言いつつなぜかニヤニヤするこいつ。

きも。きもい。いつものことだけどきもい。

「まぁ、いいっすよ。いくら欲しい?」

「え、その言い方売春みたいで嫌だ」

「人聞き悪いこと言うなぁ・・・」

別に君にそっち方向のこと期待してないっすよー、なんて。

期待されてたら引くけどさ。や、別に良いけど。引くだけだけど。

(・・・こんな現代で今更、)

そういう行為を求められて恥ずかしがったり嫌がったりするほど、私は誇り高き乙女でも、お金持ちのオジョーサマでもないし。

あぁ、でも。「あのこ」はきっと、他人に無理矢理そういう行為をされるくらいなら、笑顔で舌を噛み切って自殺するんだろうなぁ。

そういうところ、好きなんだよなぁ。

(・・・今度、久しぶりに会いにいこ)

「何いきなり幸せそうな顔してんすか?きもい」

「お前に言われたかねーよ。つか、また話脱線したし」

「はいはい、で、いくら欲しいんだっけ」

「だから、その言い方・・・んぁ」

「あ?」

「やっぱ良いや」

「は、・・・別に、良いなら良いすけど」

「いや、窓の外」

「何が?」

「初日の出」

「・・・あぁ」

「なんか、だから、別に良いや」

「・・・そっすか。よくわからんけど」

そう言いながらこいつはまたニヤニヤと笑う。

いつも通り、「やっぱ、面白い子っすねぇ」などとほざきながら。

 

 

・・・だって、久しぶりに、自分でもわけわかんないけど、”綺麗なもの”を見た気がしたんだ。

ただの日の出なのに。いつもはむしろ太陽なんて見ると苛つくのに。

多分、お腹がいっぱいで、かつ、あの子のことを思い出した直後だったからってだけかもしれないけど。

・・・それでも、初日の出なんてものは、とっても綺麗だったから。

 

 

「はっぴーにゅーいやー」、じゃなくてきっと「あんはっぴーにゅーいやー」だけど。

今日だけは、”おめでとう”とでも言っておこう。なにがめでたいのかもわからんが。

 

 

「あけまして、おめでと」

「・・・なんでおめでとうとか言ってるんすか?」

あ、やっぱりこいつの思考回路自分と似てやがる。

 

そう思って、新年早々嫌な気分になった。

 

 

 

 

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