きっと未定

 

※燕と菫の婚約発表の時の話。本編では忘れられていますが一応許婚設定でした。

 

それは私が、11歳の時の話。

「・・・菫。」

「・・・。」

「こんな壁のとこで何拗ねてんの?風邪引くよ?」

「・・・拗ねてないもん。」

「・・・菫には婚約の話されてなかったから。いきなりで驚いたよね。」

「そんなんじゃない!!!!」

「じゃあ、どうしたの?」

「・・・知らなかったのは私だけだったんでしょ?燕はずっと前から知ってたんでしょ?」

「年が近い子供は菫しかいなかったからさ。親にもずっと前から言われてたけど言われる前にも薄々思ってはいたよ。」

「・・・私だけ知らないで、馬鹿みたい。」

私は何も知らなかったんだ。馬鹿みたいに守られて馬鹿みたいに笑ってたんだ。

・・・燕はもう、背負っていたのに。

「そんなことで拗ねてたの?」

「・・・仲間外れにされたから拗ねてたんじゃないよ。」

・・・何も知らないで燕一人に背負わせてたことに拗ねてるんだ。

そういうと、燕はからからと笑った。

「・・・燕はもう大人で未来を背負ってて。自分のことよく考えてて。でも・・・一人は寂しいから、だからっ・・・燕に辛い思いさせちゃってたなって。私は子供で馬鹿で何も考えてなくて。・・・っ。」

言ってるうちにあまりの自分の情けなさに涙が出てしまった。

あぁ、なんて情けない。

「・・・そんなことで拗ねてたの。」

「そんなことじゃないよ!!!!」

「・・・僕のことを気にするなんて、僕より菫の方が強いよ。」

「・・・?」

「僕はね、小さい頃から諦めてたんだ。生まれた時から力が異常に強くて。お前は当主になるんだって言い聞かされてた。他になりたいものなんてなかった、やりたいことも、何も。自分が当主になることを疑いもしなかったし、決められた人生を歩くことに疑問なんていだかなかった。」

「・・・。」

燕は小さい頃から、崇められ、“特別”だった。

それでも、燕は力を自慢するのでもなく、笑って、皆に優しくて。

「だから、菫が神様に会いたいって言いだした時、すごくびっくりしたんだ。僕は神様の存在を疑ったことなんてなくて、会いたいなんて思ったことなかったから。」

その時から、菫は僕の特別。

だけど、それは恋じゃない。

「あのね、菫。・・・多分、僕はこれから一生、菫と結婚はするけど誰かを好きになることはないと思うんだ。ごめん、菫。」

好きになってあげられなくて。

菫には幸せな結婚をして欲しいのに。僕はそれを叶えてあげられない。

「燕・・・!そんなのっ、寂しい・・・・!」

やっぱり私の涙は止まらない。

ぐちゃぐちゃの顔で情けない私は叫ぶ。

「誰か、誰か、燕を泣かせてくれたらいいのに。泣かない人は強いけど、泣かない人はきっと誰よりも寂しいよ。泣いてほしいの、そんな風に笑わないで・・・!」

苦しそうに。

やめてよ。

「・・・ありがとう、菫。」

「・・・きっと、出会うから。燕はきっと好きな人に出会うから。」

だって・・・燕は私の大切な人だから。

 

寂しくなんて、ならないで欲しいのです。

 

 

 

 

燕が誰かを好きになるのは、

きっと近い未来。

 

 

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