2、
私には、好きな人がいる。
ふわふわで、ちょっと不思議ちゃんでズレてるけど、優しい、どこか淋しげな子。
でも、多分あの子には好きな人がいるんだ。
わかる。好きな人のことだから、みればわかる。
わかって、しまう。
「望月さんって、好きな人いるの?」
わかってるくせにこんなことを聞く私は真性の阿呆。自分から傷をぐじぐじいじりにいって。痛い。
「なんでですか?とうとつですねぇ。」
「いや、望月さんってすごい可愛いのに彼氏いるとか聞かないから。好きな人いるのかなーって。ちょっとした世間話だから、気にしないで。」
「ちょっとした世間話が恋バナって前田さんったら女子高生ですか。」
そういってゆるりと笑う。
「んー・・・好きな人ですかぁ。・・・いますよ。」
そういって痛そうに笑う。
私も痛い。
「そっか。」
「え、前田さんから聞いてきたのに反応それだけですか?冷たい・・・。・・・・・・あ、じゃあ、前田さんは好きな人いるんですか?」
「・・・いるよ。」
「さっくり言い切りましたねぇ。かっこいいです。」
「かっこいいって・・・。私、女だよー。」
かっこいいとかそんな可愛い笑顔で言われちゃうと萌えちゃうんですが。萌え禿げるんですが。
・・・ニヤけるなよ、自分。いい歳した大人が気持ち悪い。
っていうか、いい加減このやりとり尋常じゃない既視感を感じるんだけど。気のせい?
「えー、女の人にもかっこいいって言いませんか?」
「言わないこともないけどさ・・・。」
「じゃぁ、良いじゃないですか。」
ちょっと待って。だから何その笑顔、反則。
「あー、前田さんかっこいいから男の人だったらモテたんでしょうねぇ。」
男の人、だったらね。
「・・・一人の人にモテれば私はそれでいいよ。」
「うわ、さっくりそういう台詞言うところかっこよすぎですよ!!やっぱり、モテますよー。」
そういいながら、望月さんはかたりと立つ。
「あ、残業終わった?」
「はい、前田さんはあとどれくらいですか?」
「今終わった。」
「じゃあ、一緒に帰りましょう?」
「・・・うん。」
こんな暗いなか一緒に帰るとか。送り狼になってもいいかな。だめか。
・・・耐えろ、自分。女だろ。相手はまったく意識してないんだから。
・・・・・・女でも耐えられないんだよ。これだから恋ってやつは。
・・・でも、耐えるんだよねぇ。
だって
好きだから。
私の好きなひとは、可愛いひと。