4、
「前田さん。なーにみてるんすか?」
「へ?あぁ、土屋くん。何?」
「何って・・・。質問に質問で返さないでくださーい。」
「ん・・・何みてたかって?」
「ぼーっとしてたじゃないすか。前田さんが珍しい。」
「・・・望月さん。」
「は?」
「望月さん、珈琲こぼしたみたいだから大変そうだなぁって。」
「あ、本当だ。・・・ったく、あいつは相変わらずドジだなぁ。」
「同期、だっけ?」
「あ、はい。腐れ縁ですよ。」
「・・・いいなぁ。」
ここまでではたと気付く。気付いてしまう。
もしかして、もしかして。
(嘘、だろ・・・。)
「・・・前田さんの好きな人って、望月・・・なんですか?」
「へ!?いや、そ、そいういわけじゃ、な、なくって!!」
「動揺しすぎじゃないっすか。そいういってなんですか、まったく・・・。」
「・・・そういうわけじゃないよ。」
拗ねたように言うとこがたまらなく可愛いなぁ、なんて。
・・・俺、気持ちわりぃ。
「何で隠すんですか?」
「・・・女が女好きって、気持ち悪いとか思わないの?」
「は?いや、別に。」
「・・・土屋くんて変わってるね。」
「いやまぁ、前田さんならそういうのもなんか納得できますし。望月は確かに可愛い系ですもんねー。」
「・・・もしかして、土屋くん」
「何ですか?」
「望月さんのこと好きなの!?」
「はぁ!?」
「そっか・・・。・・・うん。前田くんは多分強敵だけど私頑張るから!!一緒に頑張ろうね!!」
「いや、俺別にあいつのこと好きじゃな・・・。」
「この前好きなひといるって言ってたじゃん!!もう、照れるなよー。」
照れてないし。好きなひとはあなたなんですが。
(言えない。)
「じゃあ、ひとまず望月さんの昔話聞かせて!」
「あんた、それが目的だろ・・・。」
「私が知ってる望月さん情報も教えたげるからぁ。」
「・・・いいですよ。」
前田さんと話すネタができるなら、そう思っちまった俺は。
否定なんてできなくて。
(・・・ごめん、望月。)
俺の恋路を助けてくれ。
そうして俺は。
好きなひとのちょっと知りたくなかった情報を知って。
好きなひとによくわかんない誤解をされて。
(・・・はぁ。)
溜息しかでないのは多分今日が月曜日だから、そういうことにしたかった。