5、
「前田さーん。書類終わりました。」
「お、ありがとねー望月さん。」
俺の好きなひとであるところの前田さんは、俺の同僚であるところの望月が好きなそうである。
(はたからみても気付かないもんだなぁ。)
さすが前田さん。変なところの演技力はある。
女子高生みたいに好きなひとと話す時にきゃーきゃーテンパったりはしないわけか。
(・・・って、ん・・・?)
よく見ると手滅茶苦茶震えてんじゃん。
微妙に耳赤いし。
(平然としてるふりなんてしちゃって。)
・・・クソ、可愛い。
好きなひとの好きなひとに気付いてから、彼女の新しい面を知ることができて幸せなようななんというか。
ばこん
「って!牧野さん何するんすか!」
「土屋、手止まってんぞー。あと、仕事中にニヤニヤしてんじゃねぇよ、気味悪ぃな。」
「気味悪いってひっでぇ・・・。・・・つか俺ニヤニヤしてました?」
「おーおー。ま、ニヤニヤしてても良いけど手動かせ、手。」
「はーい、すみませんしたー。」
ニヤニヤしてたか、俺。
何コレ恥ずかし・・・。
「何今度は顔赤くしてんだよ、おまえほんっと気味悪ぃな・・・。」
「・・・すみません。」
あーあ、馬鹿みてぇ。
つ、土屋くんすっごいこっち見てニヤニヤしてるんだけど・・・!
何あれ、やっぱりそんなに望月さんのこと好きなのかぁ・・・。
むむむ、やはり強敵。
すれ違っても、幸せ?