開いた窓から 私の話
「ねぇねぇ、浩太くんとるい先輩付き合ったんだって!!」
ふと聞いた幼馴染の恋の噂。
「浩太くんかっこいいから、るい先輩にピッタリだよねー。美男美女カップル良いなぁ。」
「いままで色んな女の子の告白断ってたのってるい先輩が好きだったからなんだねぇ。」
そんな雑音を聞き流しながら、私はただ「ふーん。」と相槌を打った。
「・・・なんで、泣いてんの?」
「・・・浩太。」
幼馴染は、カーテンを閉めてないとベランダ越しに何でも見えちゃうから嫌だ。
いつも通りいきなり浩太が窓から侵入してきた。こいつ、運動神経結構良いよなぁ。
「・・・浩太さぁ、彼女できたんだってね。」
関係ないこと考えて気を紛らわせてたのに、口からやっぱりあの話題が出ちゃって。
「え?」
「・・・2年の、るい先輩。」
「あ、あぁ。」
あぁ、そろそろやめないと。取り返しのつかないことを、言いそうで。
「・・・付き合いたての浩太に、言うことじゃないってわかってるよ。でも、でもね、」
「・・・いいよ、何?」
「・・・私、るい先輩のこと、好きだった、んだ。」
あぁ。言っちゃった。あはは、そんな顔しないでよ。
・・・わかってるから自分が「変」なことは。
どうせ叶わない恋なんだって。わかってたから。
ごめん。
「ごめん、浩太は、幼馴染だし、そもそも私は女だし、もともと叶わない恋だってわかってたけど・・・っ。」
幼馴染の浩太と付き合った、ってことはこれからさきずっと二人で笑う姿をみなくちゃいけないんでしょ?
なんて、
覚悟するから、今日だけでいいから、泣かせてよ。
なんて、
身近な人が、付き合うとなんか意外と、ちょっと、キツすぎるね。
なんて、
・・・ごめん、応援できない。
なんて泣いて。
もう口から出る言葉が止まらなくて。
ごめん、浩太。
・・・ほんとに、ほんとに、るい先輩が、好きなんだ。
ごめん。
浩太に言うことじゃないのに。
ごめん。
馬鹿で臆病な女の子の涙は止まらなくて。
(・・・苦しい。)
なんかよくわかんないものに、溺れそう。
息が、できないや。
開いた窓からふわり吹いた冷たい風が頬をなでた。
涙の跡が、すーすーした。