おんりー

優衣だけいれば俺はそれで良いし、

優衣だって俺だけいればそれでいいんだ。

・・・なあ、そうだろう?

そうに、決まってるんだ。

 

 

「優衣、おはよう」

「・・・おはよう」

サファイヤみたいな美しい瞳。その瞳は虚ろで俺をうつさない。

でも、その美しいテノールで、その可愛い可愛い笑顔で挨拶してくれる。

それだけで俺は幸せ。

「優衣は今日も可愛いね」

「・・・」

返答ナシ。

優衣は誉めるとすぐに黙ってしまう。

照れ屋なんだもんなぁ。

そんなところが愛しいなぁ。

「ねぇ、亮二。今、秋?」

「ううん、春だよ、優衣」

「ふうん」

「・・・どうして外の世界の季節が優衣に関係あるんだ?」

「亮二の格好が秋っぽかったから。ねぇ、亮二、外の世界って何?」

「優衣、外の世界になんて興味を持たなくて良い。何度も言ってるだろ、優衣に必要なのは」

「亮二だけ。わかってるよ」

そういって笑う。愛しいなぁ。

 

日の光をもう何年もあびていない肌は透き通るように白い。

昔の優衣の健康的な小麦肌も大好きだってけど、今の肌色も大好きだ。

優衣だったら、優衣でさえあれば、何だって愛しい。

 

「なぁ、優衣」

「何、亮二?」

「優衣が今一番好きなのは?」

「亮二。そもそも亮二以外に好きなものなんてないよ」

「優衣の・・・友達、とか、家族とか」

毎日確かめるたびにドキドキする。

優衣が外の世界を思いだしていたらどうしようって。

そんなはずないのに。

「ともだち、かぞく・・・?それなぁに?」

そうやって小首を傾げる優衣にほっとする。

あぁ、やっぱり俺の好きな優衣のままだ。

「愛してるよ、優衣」

 

 

優衣と出会ったのは中学校に入学した時だった。

初めて見た瞬間から、俺は優衣に惚れていた。

愛しくて愛しくてたまらなくて、俺だけのものにしたかった。

でも、下手に行動して捕まるとまずいし、俺は慎重に行動した。

ずっとずっと、優衣を俺だけのものにするために。

 

優衣を養うだけの財産、地位、そして俺と優衣だけの愛の巣。

それら全てを用意して、俺は優衣を迎えに行った。

俺は優衣に近づく男も女も全て排除していたから、優衣はいつだってひとりぼっち。

優衣の両親にだって手をまわしていたから、優衣を迎えに行くのに手間はかからなかった。

『亮二、どうしたの?こんな夜遅くに』

『優衣、迎えに来たんだ』

『え、何言ってんの?』

『迎えに来たんだよ、優衣』

『ちょ、ちょっと待って、あたし明日の仕事終わってないんだけど!しかも明日朝早いし!』

『行こうか。優衣』

優衣は僕が迎えに行くととっても喜んでくれた。

仕事がどうとか言ってたけど、多分俺がお金に困らない様に優衣も頑張っていてくれたんだろう。

なんて愛しくて健気な俺の優衣。

でも良いんだ。もう優衣は働かなくったって良いんだよ、俺がいるんだから。

 

『亮二、何すんの?』

『逃げちゃ駄目だよ、優衣。まぁ、優衣に限ってそんなことないだろうけど。だって優衣も俺のこと大好きだもんなぁ』

やっと優衣が俺のものになる。

嬉しくて嬉しくてたまらない。

『いっ、痛いんだけど!何この首輪に手錠、きわめつけに足枷。こんなもんどこで売ってるのさ』

『優衣は逃げないってわかってるんだけどでもやっぱり、俺のものだって言う証拠が欲しくてさ。

ごめんね、俺我儘で。これは俺なりのエンゲージリングってことで』

『亮二・・・?冗談、だよね・・・?』

そう言って優衣は不安気に俺を見る。

優衣は一体何を不安がっているんだろう。

『・・・ん?ああ!そっか、優衣は本当のエンゲージリングがないんじゃないかって心配してるんだね!』

『は、何言って』

『可愛いなぁ、優衣は。ちゃんと優衣の為に用意してるにきまってるじゃないか』

『違、そういうことじゃな』

『はい、これ。・・・優衣、俺とずっと一緒にいようね?』

 

 

 

それから俺と優衣はずっと一緒。

本当は手足を切り取って俺ナシじゃ何にもできない身体にしたいけど、そうすると優衣の抜群のプロポーションが見られなくなるから我慢。

月日がたって、優衣は外の世界に行きたいと言わなくなったし、外の世界への興味もなくなった。

俺以外のことは全て忘れた。

最高の毎日。優衣が俺だけを見て、俺だけを愛してくれる。

外の世界で輝いていた優衣も大好きだったけど、今俺の傍でふわふわと笑っていてくれる優衣はもっと好き。

 

 

「ねぇ、優衣」

「なぁに?」

「これからもずっと、一緒だよ?」

「うん、勿論」

 

愛してるよ、優衣。

 

 

おんりー:優衣SIDEへ。これを読んだ後もう一度読み直して頂くことを推奨。

 

 

 

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