開いた窓から

俺には、好きな人がいる。

幼馴染で、馬鹿で、寂しがり屋な、好きな人がいる。

 

少女漫画でさ、よくあるじゃん。特に気になってなかった人が彼女ができてドキドキしちゃって。「あれ?私もしかしてあの人のこと好きだったの?」とか。もしくは、好きな人に彼女ができて、「ごめん、応援できない。」なんて泣いちゃって。

そんなことあったらいいな、なんて考えて知り合いの子に彼女のフリをしてもらった俺は生粋の馬鹿ですか。乙女か。少女漫画の読みすぎか。気持ちわりぃか。

お願いだからこれを機会に俺を意識してくれないか、なんて。

馬鹿なこと考えたからいけなかったんだと思う。

 

 

「・・・なんで、泣いてんの?」

「・・・浩太。」

うん。まだベランダ越しに泣いてるあいつをみつけていつも通り窓から侵入した。

その時はよかったんだ。

まだ、期待してたんだ。

「・・・浩太さぁ、彼女できたんだってね。」

「え?」

「・・・2年の、るい先輩。」

「あ、あぁ。」

この時俺のテンションは絶頂で。ヤキモチ妬いてくれたのかな、なんて舞いあがってて。

でも、絶頂ってことは、あとは落ちるだけなんだ。

「・・・付き合いたての浩太に、言うことじゃないってわかってるよ。でも、でもね、」

「・・・いいよ、何?」

「・・・私、るい先輩のこと、好きだった、んだ。」

あぁ。そういうこと、だったんだ。どんなに頑張っても振り向いてくれなくて。

うん、わかった。

ごめん。

「ごめん、浩太は、幼馴染だし、そもそも私は女だし、もともと叶わない恋だってわかってたけど・・・っ。」

幼馴染の浩太と付き合った、ってことはこれからさきずっと二人で笑う姿をみなくちゃいけないんでしょ?

なんて、

覚悟するから、今日だけでいいから、泣かせてよ。

なんて、

身近な人が、付き合うとなんか意外と、ちょっと、キツすぎるね。

なんて、

・・・ごめん、応援できない。

なんて泣いて。

 

 

どうしたんだよ俺。願いは叶ったじゃんか。

「ごめん、応援できない。」とか言って泣いて欲しかったんだろ?

・・・違う、違うんだ。俺はこんなつもりじゃなくて。

じゃあ、どんなつもりだったんだよ?

 

 

馬鹿なことを考えた、馬鹿な少年は罰があたって。

幼馴染で、馬鹿で、寂しがり屋な、好きな人が泣いているのをただただみつめることしかできなかった。

(・・・吐きそう。)

ごめん。口にできない謝罪が食道を襲う。

 

 

開いた窓からふわり冬の匂いがした。

 

 

 

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