3、椅子
先生に話しかけ始めてから2週間。私と先生は車内で話すようになった。
「河津は、彼氏とかいないの?」
「・・・先生、女子校に何を求めてるんですか?」
「いや、女子校だからって彼氏ができないわけじゃないだろ?塾とか。」
「うーん・・・。ないですねぇ。というより興味もないです。」
そういって笑う。
でもね、先生。そこで妙にほっとした顔するのやめてくれませんか。期待しちゃうんですが。
・・・自意識過剰か。
彼氏はいない、か。
少しほっとしてしまった。・・・顔に出てないよな?
「あー、じゃあ河津はさ、どんな男が好みなの?」
「だから興味ないんですって。」
「世間話の一環でさ、ちょっと考えてみてよ。」
「・・・うーん。あ、女の子に優しい人が良いです。」
「え、河津に優しい人じゃなくて?」
「私に優しい、というよりは、女の子全体に優しい紳士的な人が良いです。」
「じゃあ、何。女たらしが好きってこと?」
「そういうんじゃなくて・・・。あぁ、でも確かに天然の女たらしなら好きかもしれないです。」
「わからん・・・。」
「だって、私女の子には常に優しくありたいと願ってますもん。女の子が困ってるなら助けてあげたいし、泣いてるなら笑わせたいし。だから、女の子に優しい人じゃないとわかりあえない気がする。」
・・・こいつこそ、天然たらしだと思う。こんな真摯な目できらきらとこんな台詞言われたら、
(惚れないはずがあるか馬鹿!)
男の俺でもときめいてしまった。
(・・・なんか、逆に女子校なのが不安要素になってきたな・・・。)
はーあ。・・・恋敵は多そうだ。
「あ、でもセーラー服に萌えを感じられない人はもっとだめだ。」
「・・・お前、イケメン発言のあとにそんな変態発言するから駄目なんじゃないのか。」
「え!?だってセーラー服は天使のアイテムですよね!?セーラー服に萌えを感じられないなんて男じゃないですよ!!」
「何だその極端な発言!!全国のセーラー派じゃない男に謝れ!!」
「えー、だってあの単色プリーツスカートにセーラータイ。さらには厚い黒ストッキングだったりしたらもう、最高じゃないですか!!あー、でもなあ、三つ折り白靴下も捨て難いなー。こうあれですよね、スカート丈は膝ちょっと上で膝の上が見えるぐらいでなんとも言えない胸のときめきが・・・。」
「指定が細かすぎてもう何も言いたくない・・・。」
前言撤回。やっぱりこいつはモテないだろ。
「あ、じゃあここで。」
しばらくセーラー服について語ったあと彼女は降りていく。
スカートがひらりと揺れた。
(・・・なんだかんだ言ってお前の制服はブレザーじゃないか・・・。)
君がブレザーだから俺はブレザー派です、なんて。
(色んな意味で言えないなぁ・・・。)