4、車輪

がたたん、ごととん。

がたたん、ごとん。

電車は揺れる。

 

「先生って、彼女さんとかいらっしゃらないんですか?」

「え、いないけど」

「ふーん」

何だこの質問。

期待していいのか、だめなのか。

「・・・何で?」

「いや、いそうな顔だから。それだけですけど」

あっけからんと言われた。

(こっちの気も知らないで・・・)

罪な女だなぁ、こいつ。

いや、勝手に期待した俺が悪いんだけど。

 

「あ、全然関係ないんですけど」

「うん?」

「私、最近の少女漫画の偉そうな男子すっごく嫌いなんですよね」

「うん、全然関係ないね」

それだけ俺の彼女話はどうでもいいってか。

まぁ、いいや。もともと河津が俺のこと好きだなんて思ってもないし。

(君のことが好きでいられるだけ俺は幸せ)

だなんてかっこつけてみたりして。

「先生?話聞いてますか?」

「聞いてない」

「ふーん、で、最近の少女漫画なんですけど」

「俺が聞いてるかどうかはどうでもいいのかよ」

「だってなんだかんだ言って聞いてくれるしゃないですか」

そういうところ、優しいですよね。なんて言われちゃったら、

惚れなおすしかない。

やっぱり好きだ。

「なんでいわゆる・・・ヒーローって言うんですかね?相手役?って、偉そうなんですか?」

「しらねえよ」

「女の子苛めたらモテるんですか?そんな不可解な」

「イケメンにされるならなんでも嬉しいんじゃないの?」

「理不尽な世界だなぁ」

「どうでもいいなぁ」

「誰かこう・・・偉そうなイケメン男子の・・・鼻っ面叩き折るゲームとか漫画作ってくれないんですかね」

「誰が買うんだよ」

「私ですけど。あいつら許せん」

「はいはい」

 

 

 

「それじゃ、ここで」

今日もいつも通りの他愛無い会話をして、そうして彼女は電車から降りる。

 

 

帰りに目についた少女漫画を買ってみた。

(・・・あのこが言ってたこと・・・わからんでもないな)

どうやら、イケメンはたいがい何をしても許されるらしい。

(これが、女の子の夢と希望・・・?)

あのこには、絶対適用されないけど。

そんなところが、好きだなあ、と今日も想った。

 

 

 

 

 

/目次/次