開いた窓から 君の話

 

いつか好きな人が、あの人が、「付き合ってください。」なんて言ってくれたらいいな、なんて夢見ちゃって。

・・・だって、だって、私だって女の子だから。

そんなこと馬鹿みたいに浮かれて妄想してた昨日までのあたしはなんて幸せだったんだろう。・・・あぁ、くらくらする。

 

 

「俺と付き合うふりをしてくれませんか。」

ふり。そう、ふりだよ。嘘っぱち。

まぁ、要はそんなこと頼まれたってことは

(・・・恋愛対象外、っていう宣告か。)

だってさ、恋愛対象の子にはこんなこと、頼めないじゃんか。

「あいつの気持ちをどうしても知りたいんです。」

その目はたった一人の女の子しか見えていなくて。改めて、あぁこの人はあたしなんて見てないんだなぁなんてつきつけられた。

「・・・失礼だってわかってます。ふり、だなんて。でも、こんなこと頼めるのはるい先輩しかいないんです。」

君に呼ばれるのが大好きだった自分の名前が重くのしかかる。自分の名前、嫌いになりそう。

(・・・でも。)

まだ、“るい先輩しか”なんて扱いに喜ぶ自分がいて。

(馬鹿、だなぁ。)

あたしは、本物の馬鹿。

「・・・あの子が、あたしと付き合ってるって知って身を引いちゃったらどうすんの?結構危険なかけだよ?」

「いいんです。その時は諦めますから。」

きっぱりと言い切る。

男らしいなぁ。

・・・そんなとこも、好きだった。

「・・・わかった。良いよ。」

「本当ですか!?ありがとうございます!!!」

「はは・・・頑張ってね。」

「はい!」

嬉しそうに駆けていく君を見ながら、頑張らなくて良いのになぁ、そんなことを考えたあたしの心は汚い。

 

 

家に帰って死ぬ程泣いた。少女漫画のヒロインみたいに泣いたらすっきりして気持ちが落ち着いた、なんてことはなかった。

泣いても泣いても泣き足りなくて。

泣いても泣いてもやっぱり好きで。

泣いても泣いてもあの人の恋の応援なんて出来なかった。

あたしはヒロインみたいに綺麗な心は持ってなかった。

泣きすぎて吐いちゃって。やっと少しだけ落ち着いた。・・・でもやっぱり好きだった。辛かった。苦しかった。

ずっと好きだったんだ。あの人の幼馴染の女の子と3人でよく遊んだ。懐いてる仲の良い可愛い後輩。

(いつから、好きになっちゃったんだっけ。)

わからない。

わからないけど、気付いたら好きだった。

堪らなく、好きになってた。

(はは、恋って不思議だね。)

自嘲。嘲笑。

(視界が、またぼやける。)

ゆらりゆらり。蜃気楼みたい。

(目がヒリヒリする。)

痛い。もうよくわかんないけど、痛い。色んなとこが、痛い。

(・・・あのこ、かぁ。)

幼馴染の女の子が好きだと言った。

あの人が。

やっぱり応援なんて今もできないけどあの人が笑えていたらいいなと思えた。

(・・・ほんと、あたしは馬鹿だよ。)

 

 

ぼんやりと眠気に包まれながら、

開いた窓からどこかの家のカレーの香りが鼻をくすぐった。

 

 

(・・・お腹減ってきた。)

明日はみんな

笑えてれば、いいなぁ。

 

 

 

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